2014-11-05

10/14 Gergiev at SUNTORY HALL 2nd MVMT

マリインスキーのサントリーホール1日目の
・ブラームス「ピアノ協奏曲 第2番」(ピアノ:ネルソン・フレイレ) 
(映像はバーンスタイン指揮のウィーン・フィル(1985年)
ピアノ:クリスティアン・ツィマーマン)

古典物が苦手なので、ベートーベンの後継者である
ブラームスは正直どうも食指が動かなかった。

ブラームスの楽曲。
それはどれも宝石のように美しく、
純粋無垢で(ワルツ39-15とかまさにそう)
どの角度から聞いても眩しく輝いている。
その「素直さ・聡明さ」が私にとっては
なぜかあまり「面白くなく」ピンと来ないでいた。
海が凪いているよりも暴風雨と雷鳴を好んでしまうもので・・・。

故に
ブラームスを自ら聞きに行こうというのが
本当に今までなかった。

なので、比較的有名なこのピアコン2を聞き続けていると、
第1楽章の牧歌的な繰り返しと転調(ホルンの響きよ!)
第2楽章の感情ほとばしるスケルツォ、
第3楽章のピアコンなのにチェロの独奏ばっかり!
第4楽章の緩急と優美さ
と気づくことが本当にたくさんあり
集約すると、テクニックが複雑でなんと情熱的なことか!
と胸がグラグラするほど当惑させられた。

しかしながらこの夜のフレイレ氏の演奏は
半ば私を失望させた。
角がない球体のような暖かみのあるピアノの響き。
初めて拝見拝聴し、
優しく上品で高貴な超一級のプレイだったのだが、
炎の如く、ほとばしる情熱は感じられなかった。

単にゲルギエフとの相性が悪いことに尽きるのかもしれないのだが、
オケは多少もたつき、誠に不十分なピアコンだった。
第3楽章のチェロの独奏はよかったのだがね。
(マイリンスキーの首席チェロのお方)

アンコールはグルッグの「精霊の踊り」
これは逆に情感こもっていてよかったなぁ。独奏だからね。

休憩を挟んで、お目当てである
ショスタコーヴィッチの第8番。

(ムラヴィンスキー指揮 レニングラードフィル)
ショスタコーヴィッチの良交響曲は奇数、と定説にあるが、
(5,7,11,13)
あの7番「レニングラード」の次曲である8番もなかなか良い。
スターリン政権下での「クラシックで戦争を表現する」という
使命感(基いプロパガンダ)で音楽を作り上げたショスタコ。

第1楽章冒頭から、鉛のように重く漆黒の海の世界を
延々と漕ぎ出でる単調な調べ。
第2楽章で、ふと奇行じみたフルートの旋律が聞こえると
形勢逆転の兆し。

そして私の大好きな第3楽章の一心不乱なストリングス。
もうこれはテクノミュージック!
途中の小太鼓と、ハイスピードで蛇行運転してそうなトランペット。
ここよーく聞くと、裏打ちのリズムなんだよね。スカっぽくて!
(真面目にクラシック聞いている人からしたら怒られそうですが)
もうここの楽章、前のめりで聞いてしまいました。

ずーっと上述のムラヴィンスキー盤を聞いたり
映像を見ていたので、
このストリングスのボウイングが、同じ角度でビシーーっと動くさまも
どうしても見たくて見たくて・・・。

なので、この第3楽章は目にも耳にも幸せな8分間だった。
8台のコントラバスは艦隊さながら、ブラス群との応酬、
すり鉢場のサントリーホールの響きの良さは日本一なので
位相もばっちりで大迫力。
そしてゲルギエフは、爪楊枝のような指揮棒(もしくは焼き鳥の串)で
オーケストラを統制していく。
この夜は爪楊枝だった。

圧巻だったのが第5楽章の最後。

浮遊して、ゆっくりと音が回転しながら、
ピアニッシモ(PPP)で「死に絶えるように」と書き残した
マーラー9番の第四楽章、さながらだった。

マーラー9番は、心の機微を掬い上げるような繊細さであるが、
ショスタコ8番は、あの派手な音からの「落ち着きっぷり」である。
この動から静への移行、そして何と言っても
ゲルギエフのこの細やかさが白眉ものだった。
いつもは派手で粗野なタクトっぷりなんですがね・・・。

観客も、ゲルギエフが「爪楊枝」を
ゆっくりと下へ降ろしたのを見届けてからの拍手とブラボーの嵐。
本当に今夜は観客の質が高かった!
(フライングブラボーする人がいなかった)

そしてアンコール。
!!!
ワーグナーの「ローエングリン」!!!

実はこの「ローエングリン」
2年前にゲルギエフ指揮のNHK音楽祭へ行ったとき
(確かこの演奏会はロンドンから帰国した直後だった
そういえば故マゼールも見たんだっけ。いろいろ私も体験してたんだなぁ)
やはりアンコールで初めて聞き、
天上の音楽とも言うべき美しさのあまり、死にたくなった。
長旅から帰ってきたばっかりというのもあったので、
感受性がいつになく研ぎ澄まされていたと思う。

ストリングスの清らかな
「虹色の雲に反射する紺碧の波」に漂いながら
2年前のことを思い出し、いやそれよりも昔のことを思い出し、
ぷかぷかと浮いたり沈んだり、生活っていうのは・・・
なんて悲劇ぶって、あぁでもこの美しさは例えようもなく
また明日からも頑張ろうなんて、酷く陳腐なことを考えていた。

アンコールが終わって、ブラボーの嵐嵐嵐。
時計を見ると、もう22時近く。
この時間に終わるのは珍しすぎる!
確かに3時間近く、全神経を音に手向けていたのだが
至福の夜、だったとしか言いようがない。

勘違いでチケットを買ってしまったのが福となった。
何よりもそれが嬉しかった。
そして本命は明日!その事実がまた更に嬉しかった。

10/14 Gergiev at SUNTORY HALL 1st MVMT

久しぶりにクラシックの演奏会に行ってきた。
10月14日にサントリーホールで行われた
ゲルギエフ指揮のマリインスキー歌劇場管弦楽団!

ブログには書いていないけれど、
(そのうち、したためられたらいいなぁ)
最近は内なる反動で
漫才ばかり聞きに行っている有り様。

葉桜の頃、近所の小屋に出ていた
「三四郎」を自転車を漕いで見に行ったら、
その青春パンクのような懐かしさに大変衝撃を受け
ずぶずぶとはまってしまった!
勢いでAmazonレビューも書いてしまった!
(今見たら票が入っていて驚いた!)

対バンならぬ「対漫才」でよく拝見していた
同じマセキ芸能社の「浜口浜村」は
まるで安部公房と内田百閒先生、寺山修司、
丸谷才一を混ぜたようなアングラ観漂う文系漫才。
(「風街ろまん」も少し入ってるんです?)


ずっと漫才を聞いていたら
あ、これはPGウッドハウスやダグラス・アダムス、
ジェローム・K・ジェロームのような行間とでも言うのかしら?
あと陳腐な物言いだけど少しモンティ・パイソンのスケッチの
影響を受けてるんだろうなぁ、とワクワクした。
(勝手に自分がそう思っただけなんだがね)

もっともっと言うと、
名著「トリストラム・シャンディ」の世界観を垣間見た。
「初心」というネタを初めて聞いたときは、ドキッとしたわ!
そうそう作者のローレンス・スターンを
日本に紹介したのは「三四郎」を書いた夏目漱石!
おぉ、何たる偶然!(こじつけじゃないよ!)
とまぁすっかり浜口浜村に感銘を受けてしまいまして。

そうそう恐れずに言うと
彼らって、イギリスっぽいんだよ!
ナンセンスで無軌道で、残酷で、脱線して、皮肉っぽくて
最高に笑えるご褒美が最後に残されていて。
そしてその最後に辿り着く迄がものすごく長い!
(もっと言うと、アメリカのように万人が笑わない!それがイギリス!)

「銀河ヒッチハイクガイド」から引用するならば
「Don't Panic!結局、タオルが一番大事!」
(浜浜が言いそうなセリフでしょう?)

悲しいかな、そういう論評をとんと見ないのだが。
まー私の漫才の見方も相当「?」なのかもしれないがね。
そこから派生して別の漫才を聞きに行ったりしていたら
すっかりカレンダーも残り1枚になってしまった。

元来、欲張り体質で一つの所に留まれない、
更にどうやら「飽きっぽい」性分の上に
自分でも驚くくらい突発的に「真逆に振り切る」傾向有り。

自分自身を俯瞰で見下ろしていると
これを好奇心旺盛と見るのが相応しいと思う。
新宿Fuからサントリーホールの振り幅。
そう、これこそが自分である。
この幅の広さで何度救われたのだろうか。

というわけで、
ここからが本題なのだが、
毎年のように来日しているゲルギエフが
なんとストラヴィンスキーの初期バレエである
「火の鳥」「ペトルーシュカ」(木人形!)
「春の祭典」を一気に演奏!


うわあああ、豪華!そりゃあ行くだろうが!
しかもマリインスキー!
ロシアものをロシアの楽団でロシアを代表する指揮者が振る・・・

だいぶ指揮者でクラシックを聴きこなせるようになってきた私ではあるが、
ゲルギエフにも不得手があり、ドイツもの・・・特にマーラーなどは
どうも噛み合わないよなぁと思うのだが。

イントロが「結婚行進曲」と間違えそうになる
出落ち感満載のマーラー5番!

初ゲルギエフがマーラー1番「巨人」で、当時は
そのダイナミックさに大感動したのだが
時を経て、ううん?と邪推。

まぁこれは好みの問題でもあるのだけど。
作曲者の故郷の楽団や指揮者で聞くのは
ひとつの選択肢としては有効なのかなぁなんて思ったわけですが。

ゲルギエフのプロコとか爆発してて、やっぱりいいもんなぁ。
ソフトバンクの予想GUY(なつい)
イングランド・プレミアリーグの
Sunderland AFCはこの曲で入場します。士気あがるね!

で、そんなわけで勇気を出して初夏の折に
S席のチケットを買おうとしたのだが、
何を間違えたのか、前日のチケットを買ってしまっていて!

演目は
・ブラームス「ピアノ協奏曲 第2番」(ピアノ:ネルソン・フレイレ)
・ショスタコーヴィッチ「交響曲 第8番」


慌てて次の日を買いなおしたのだが、
まさかまさかの2日間連続で
サントリーホールに通う羽目に!
2日間で4万円近くの演奏会だよ!

三四郎や浜口浜村だったら30回は見れるのに!
社食何日分だよ!

愚痴っているのも何なので、
ショスタコ8はさておき、
ブラームスのピアコン2はもう親の仇ってくらいに必死に聞き倒した。
会社の行き帰りは、3ヶ月くらいこの曲ばっか聞いていたし、
スコアもガンガン眺めて、いざサントリーホールへ。

つづく