2015-08-18

浜口浜村・単独ライブ「納涼の夕べ」弐

(前回よりの続き)
会場に入ると、広末涼子の曲が薄くかかっていて、
その「ふかふかな」座席に腰を下ろして、開演を待った。

同業である芸人さんが鈴なりに客席にいて、愛されているんだなぁと感じた。

開演前の諸注意は「浜口お麩太郎(あ、OFF太郎か)」によるもので、
携帯電話を鳴らすな、写真は撮るな、という大真面目なものだったが、
携帯ファービーを鳴らすな、カボチャがどーのこーのと、いうような、
ちょっとしたトラップがやっぱり盛り込まれていた。
浜浜様式美、ですね。
(またこのアナウンスが、滝口順平と熊倉一雄の中間のような声色で
事もあろうに、ゆっくりとした抑揚で話すので、
頭の中から追い出すのに一苦労)

そしてお二人が下手から、ニコニコしながらお目見え。
当たり前だが、新宿や下北で見る浜口浜村ではなかった。
劇場の作り云々ではなく、実に堂々と、
頼もしく誇らしく真ん中に立っておられた。
単独ライブの登場シーン、
それは
本馬場入場で、勢いよく、返し馬をする美しさにも似ていた。
マイルストーンだ、彼らにとってのマイルストーンをこの目で見る嬉しさよ!

そうして、漫才が始まったのだが、
浜村さんは、やはり、のっけから不思議なボケをかまして、
一気に観客を虜にする。オープニングに相応しい漫才!
不可思議な世界の始まり。

と思ったら、いきなり
「作品は子供だ、だとしたら僕はたくさんの子供を殺している、
ちゃんと成長した子供はいない、
そうして今日また何人もの子供を殺すのだろう、ごめんね」
とキューピーさんの首を絞めていた浜村さんの映像。

大好きな漫才なのに、それが時として彼を苦しめ悩ませている、
誰も見たことがない漫才を作り続けている鬼才なのに不遇で・・・
と叙情的かつペーソス溢れる内容に泣きそうになっていたら、
対抗・相方の浜口さんは、
(多分)E・サティの「ピカデリー」が軽快に流れ
チャップリンの小品のようなファンタジー!
しかしやっぱり案の定、予想の遥か斜め上を突き抜け思考停止。
ぽかーん。なんだ、このコンビ間の高低差。

私は、どの漫才師、コント師もそうなのだが、
ネタを書かない方の天性の才能が爆発する様を見るのが大好きだ。
今宵の浜口浜村に関して言えば、浜口さんの
物販のイカ、開演に先立ちのアナウンス、そしてこの映像、の三段跳躍は
五感を大いに刺激し、私は既に、ここで第一のピークが来ていた。
(ピークハヤイノネ)

そして新作漫才を次々と披露。
浜村さんのペンによる、この夜のための書き下ろし13本は
その着眼点、その言葉のセンス、
普遍性を無視しているのに納得させられる説得力、
置くべきところに置かれる爆弾、気づかないところにある地雷(に嵌る)
それらが容赦なく襲ってきて圧倒された。
何度も大笑いして、横腹痛くなってしまった。
(タモリ倶楽部のOPは、もうこれから違うものに見えるのだらうな)

変化球を超えた魔球が次々と投げられて、
翻弄させられて、揺さぶられて
どよめいて、そそのかされて、騙されて
吐きたくなったり、頬は緩んだり、目頭が熱くなり、
笑って笑って笑って、そしてそしてそして
楽しくて楽しくて楽しくて楽しくて!
その後に続く拍手拍手拍手。
万雷の拍手が座・高円寺2の壁や天井に跳ね返って
共鳴音でぐるぐるした円弧がいくつも出来上がっていた。

ぶっとんでる発想の漫才を、前のめりで聞いていたら
(意図的かどうかはわからないけれど)、
浜口さんが「狂っとんかて!」と名古屋弁で突っ込んでたのが
大変印象的であった。
他でもない隣にいる知己朋友の浜村さんに向けられていたのかなぁ。

と思ってみたら海馬が作動。
昨年の12月から隔月で新作漫才を披露する
自主ライブ「骨ライブ」を敢行していた浜口浜村。(3回敢行)
ツッコミがすべて名古屋弁という漫才もあったなぁ。
初めて映像に挑戦してみたり、と
そこで培ったものが今宵、結晶となったのは言うまでもなく。
2本目の「無人島」を見てそう思い、
そういえばあの時浜口さんは
(やっぱり)不思議な物販を売っていたっけなぁ・・・
と連鎖的に思い出してしまった。(奇しくも購入したのは、この駒)

体を張った「椅子取りゲーム」
そしてタイトルの語感が楽しい「ガバーする」は
大きな舞台でやるからこそ、の迫力。

各々の漫談のスタイルも独特で
浜村さんは、自分の視力に関してだったけれど、
浜口さんは、やっぱり競馬だった。
「風か光か、タマモクロス」の
オグリとの芦毛世代の幕開けの88年の秋天についての漫談。
(スーパー競馬!大川慶次郎さんの声がひどく懐かしくて涙が。
走るために産まれてきた、という美しい言葉もグッとくる!)
にしても、タマモクロス!古!と思っていたら
その息子マイソールサウンドのことに触れ、
世代のナカヤマフェスタ、そしてその父のステイゴールド・・・
のところで「ガバー!」だった。
それにしても、この4頭は晩成型。晩成型の馬はいいですね・・・。
おっと、いけない、ついつい競馬のことばかり書いてしまったぞ!(茶番)

新作漫才13本を披露した浜口浜村。
(ちなみに特に好きだったのは訪問販売、
相方変更、空き時間、スピーチも良かった!)
浜村さんが今宵の為に生み出した「子供」は
今後、すくすく育っていくことだろう。
かくして「納涼の夕べ」も終焉に近づいてきた。
最後の最後で、振り出しに戻る、という伏線があり、
満を持して浜口さんの飛び道具が登場し、大団円となった。

と思ったら、実はこれからがハイライトで
エンディングで、なんと浜村さんが坊主になっていた!
えええええええええええええ!
ポポポ( ´゚д゚)´゚д゚)´゚д゚)´゚д゚)´゚д゚)ポヵ-ン
こんなビックリしたことは未だにないわ!
笑いというよりも、どよめき、困惑、大丈夫なの?と
正直、動揺している自分が確かにいた。
でもその潔さにすぐに大笑いに変わったが!
何よりも、隣でにこやかに笑みを湛えている浜口さんが
本当に楽しそうだった。

エンディングで「M-1」に向けた漫才をやるつもりだったのになぁ、と吐露。
ふと、「誰も行かない道を行け、茨の中に答えがある」というコピーが
頭をかすめた。
誰にも真似できない浜口浜村の武器で、勝ち進めると信じてやまない。
いや、きっと出来ると信じている。どうかどうか頑張ってほしい。
いつでもいつまでもエールを送り続けよう。

心にいつまでも留まる素晴らしい舞台を、
浜口さん、浜村さん、本当にどうも有難う、の
気持ちでいっぱいの、至福の夏の夜であった。

ちなみに終演後、余韻に浸って「太陽」でラーメン食べて
その後の帰り道でボーっとしていたら、車に轢かれそうになった。
大和陸橋辺りで。しななくてよかった!

披露した漫才・・・①納豆、②無人島 ③盗み ④空き時間 ⑤訪問販売
⑥椅子取りゲーム ⑦スピーチ ⑧話し方 ⑨ガバーする ⑩ツムツム
⑪相方変更 ⑫ビビり ⑬丸

浜口浜村・単独ライブ 「納涼の夕べ」壱

最近は、twitterばかりで彼是呟いていましたが、久しぶりのブログ更新。
最後に更新したのが、死闘の「2014年有馬記念観戦記」で、9か月ぶり!
いつのまにか季節も夏となり、
その時の出走馬も半数近くが引退!時の流れを感じるな・・・
ゴールドシップも今年の有馬で引退。
最後は誰が騎乗するのかな、
私としてはウチパクさん復活してほしいな・・・。
(デモ カネガカラムト ヨコノリハ ホンキダスンダヨナ!)

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ところで。
何かを見た聞いた知った行ったことを誰かに伝えたい時に
twitterは、即時性の点でみたら本当に有益で、
140字余りで紡ぐ文字だからこそ、の魅力があるのは承知で。
その一方で、川のように流れていってしまう寂寥感というか、
喪失感というのも、何となく自分の心の中にあるというか。

心が転覆するほど揺さぶられた物事に遭遇したり、
何というか「自分にとって大きな日」になった時は
咀嚼する時間が必要で、とどのつまり、
自分のこの「庭」にて、
川の流れを止めるための「石」を置きたくなってしまう。
(はい、有馬記念はそうでした!)
なので、いつかの誰かにとって「布石」になるような文をしたためていこう。

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8月13日(木)浜口浜村単独ライブ「納涼の夕べ」を見に
座・高円寺2に行ってきた。
浜口浜村は、名古屋出身の漫才師で、
詳細はネットなどを参考にしていただければと思うのだが、
昨年から、どうしたものか熱にうかされている状態。

実は有馬記念に行く前、ちらっと駄文を書き散らかしていたのだが
読み返してみたら、我ながら、かなりの熱量だなぁと目を細めた。
独りよがりも甚だしいな。若かったな。
それでも「いつか浜口浜村の事をきちんとブログで書きたい」と思っていた。

ここ1年ほど時間が許す限り、彼らの舞台を見続けた。
彼らの長い活動期間からしてみれば、私なんぞ新参者に過ぎず
嗚呼なぜもっと早くお眼にかかれなかったのか、と思う。
そういうことは、日常に往々としてあり
過去に戻れないのならば、現在と未来を踏破するしかないのだけれど。

「変な漫才」というのが、浜口浜村を形容する常套句で
初めて見た時は確かに「変だなア」だったけれど、
その「変さ」は私にとっては
「Strange」の意ではなくて「Extraordinary」であったし、
その初心は今でも全く変わっていない。
ふらぁーと現れて、よくもまぁこんな発想思いつくな、という漫才を披露し
ふらぁーと帰って行く。何度も何度も自分の心に稲妻が走っていた。

この単独ライブが行われる一週間ほど前、
「中日新聞の地方版である東京新聞」(ここ重要)に彼らの記事が掲載。
職場で可哀想にリサイクルの箱に打ち捨てられていたところを2部救済。
リサイクルしなくて良い!別のものにならなくて良い!

浜口浜村のことを全く知らない人へ向けて
簡潔な自己紹介で始まり
単独ライブ公演のお知らせで結んである大変わかりやすい内容。
上述の「変な漫才」の説明を熱く語っている一文に、
自分の左胸がありえないくらい早くリズムを刻んでいた。

新聞に載るというのは本当に凄い事で、父母世代には名誉な事で。
自分が新聞社勤めだった為、その複雑な工程やチェックを突破して
輪転機を回して、世に、人々の手元に届くことを知っているからこそ、
なのだけれども。

これは余談なのだが、名古屋に住む知人に
中日新聞に載っているかどうかを確かめてもらったところ
(※中日新聞は愛知県でのシェアはトップ!)
答えは「載っとらんが!」
嗚呼、なんたることだ。
地元の喫茶店でモーニング食べながら、中日新聞読んで
文化面めくったら、浜口浜村が!なんて、素敵なことなのに・・・。
惜しいな、まったく。

そんなこんなで、そうして満を持して、待ったこの日が来たのだった。

高円寺の街のイメージからすると、らしくない、と言われる
(行きつけの高円寺の某飲み屋での会話より抜粋)
「座・高円寺」は、そんなボヤキも気にしないほど
本当に素敵な劇場で!

地下2階に行く螺旋階段は、海の底、に
あるいは宇宙船に続いているかのよう。
(キューブリックっぽいとも言える)




 (別日に撮影)
 
「海の底」に着いたら、何の因果か浜口さんが作った「イカ」が売っていた!
イカって!
思わずイカ2杯買わせていただきました。

 (長いので続く)