2011-01-15

Brighton Rock

年末年始休みは、図書館で借りた本やCDをゆっくり堪能しておりました。

図書館へ行くと、知の泉が沸くと同時に、なにか打ちのめされた気分になる。
多くの蔵書を目の前にして、あぁ読んでいない物(知らないこと)が
まだまだ沢山あるんだ、と。

情報の即時性が何だか最重要に叫ばれる昨今だけれど、
私はあんまりそこは重視しておりません。
むしろ、重要なものには、速い遅いって関係ないし。
ゆっくりと深く堪能したいときだってあるんだ。すぐに答えがでるのも嫌なのです。
だから図書館が好き。自分のペースで好きなものを好きなだけ。
尽きることのない情報がすぐそこにある。それも無料で!

自分の脳内HDは、それこそ無限スペックだしねぇ。
そしてそれを育てて蓄えることの方が重要かも。
(当たり前か)

グレアム・グリーンの「ブライトン・ロック」を読破した。


熱にうかされるほどの英国狂だったとき、一度読んだことがある。
ただ私も無知が故のありがちな間違えをしていた。

「(英国南部の)ブライトン(の)ロック(ンロール)」ゆえに
連想するのは、当然「さらば青春の光」→モッズの話。

でも違ったんですね。
ブライトンロックとは、ブライトンの観光地で売られている
「金太郎飴」のこと!

しかし本の内容は、一応読破したものの、当時の軟派なわたくしの心には
あまり響くものがありませんでした。カソリックのこととか無知だったし・・・。

もう一度ちゃんと読み直そう、と思ったのは
昨年秋の東京国際映画祭で新作を見たから。


1964年ブライトン。静かなイギリスの海辺の町に、犯罪組織が入り込んできた。
野心的な若いギャングのピンキー・ブラウンは、
他のギャングたちが縄張りを乗っ取ることを阻止しようと躍起になっている。
しかし、ピンキーがライバルを殺した瞬間、何も知らない若いウェイトレス、
ローズの手に重要な証拠が渡ってしまう。
ピンキーはローズがしゃべらないように誘惑するが、
ローズの雇い主アイダが、この事態に深い興味を持ってしまう。
死刑廃止の1年前、ピンキーは自分を裏切らないと、ローズを信用できるのか? 
そしてローズは、ピンキーが自分を犠牲者にさせないことを
信じることができるのだろうか?
http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=5


「Control」でイアン・カーティスを演じたサム・ライリーが
「不良少年」のピンキー役というので、思わずチケットを購入してしまったのだけど、
彼はやはり苦悩顔がよく似合う。受難の相がでてる俳優さんの筆頭かも!
60sファッションといい、劇中のサントラ(Dave Clark Five!)も雰囲気満点です。
しかし2011年1月現在、日本での配給・公開は決まってません・・・。


左にいるのが監督。ティーチインの最中でも、
コンペ部門なのか撮影自由でした。


読み直してみて、ブライトンロックの内容は、とても深い。
あの年では理解できなかったことが、今では嬉しいかな悲しいかな、
人生経験を積み重ねてきて、手に取るようにわかる。

映画と原作は、時代設定やローズのセリフ、
ラストシーンなどが異なるのだけど、
善と悪、信じること、裏切ること、その対比がとても鮮やか。

天国を神を信じないピンキー、
そうではないローズ、
罪を重ねることに脅えるピンキー、
死ぬことは恐れないローズ、
罪から逃れるために好きでもないローズと偽装結婚するピンキー、
そんな扱いでも幸せを感じるローズ・・・

この冷ややかな、始めから崩壊前提な関係、
ピンキーもローズも
カソリック信者として描かれている。
グレアム・グリーン自体も、カソリック信者なのだけど、
信者ゆえのアイロニーが痛快。

ミステリーでもあるし、サスペンスでもあり、
ラブストーリーでもある稀有な内容。
夢中になってページをめくってしまった。
いい本にまた巡りあえたわ!

また丸谷才一の翻訳が素晴らしかった。
彼とか中野好夫とかの
所謂翻訳のパイオニアの名著は
今の時代には「古い」のかもしれない。
でも、自分の感覚にはなんだかフィットします。
日本語の難解さと美しさが表裏一体で。

グレアム・グリーンの作品は映画化も多いのだけど、
次は「第三の男」に挑戦してみようかな。
原作だとエンディングが違うそうだけど、
映画の超有名なエンディングは、大好きです。

あのジョセフ・コットンに目もくれないで
ガン無視のアリダ・ヴァリがたまらない!
(ヴィスコンティの夏の嵐、好きだったなー)
神宮外苑でパロディとか何百人とやってるんだろうなぁ。

2 comments:

Unknown said...

私もこれ、気になってたけどまだ見ていないやつの一つ。
UK、アイルランドではちゃんと宣伝してたな。

きっと今になったら、もっとずっと分かるんだろうなあ、
と思うものの一つに
「セックスと嘘とビデオテープ」があります。
さすがに15歳のときはピンとこなかったけど
今見たら、おそらく「これか!」と膝をたたいてしまうんだろうなあ。

Kajiko said...

若い時に、
聞いたり見たり読んだものが理解できなくて、
年を重ねて時を経て自分なりに解釈できる・・・
そういうの、すごい財産になるよねー。

あー「セックスと嘘とビデオテープ」分かるわ。
若いときはタイトルだけでAVか?とか思ってたしw

私にとって理解できなかった映画は、
ゴダールのほとんどの作品なんだけど
ちゃんと理解できる日が来るのか・・・?
うーん、食指も動かないんだけどねwww

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