この「PULP A Film About Life,Death & Supermarkets」ですが
(予告編第2弾)
2012年に地元シェフィールドで行われた
再々結成ライブを軸にして
いかにPULPが「シェフィールドの星」であるのか、
というのを実在する地元民
(Common People)のインタビューも交えた
ドキュメンタリー映画、という感じ。
ちょっと前に制作されたローゼズのものと、ちと酷似。
でも明らかに違うのが
「おらが町『シェフィールド』」の人に
本当に愛されているんだ、という特別感。
いかにPULPが人の心を打つのか、というのを
みんな熱心に語ってくれる。
これは紛れもなく「シェフィールドからのラブレター」だ。
それにしても
老若男女限らず、PULPの認知度があるのは単純にすごい。
余談だが現地では「パルプ」というよりも
「ポゥプ」という発音に近いね。
もっと厳密に言うとパとポの中間の音、難しい。
全盛期の1995年のリアルタイムで知らない世代が
後追いで知って(きっと親の影響!)
今も聞き継がれているのは、私も胸熱。
わざわざシェフィールドのライブを、
アメリカから見に来た女の子とか
なんか昔の自分を見ているようで、泣けたわ。
PULPと言えば兎にも角にも
やっぱり「Common People」
(Stone Rosesの代打で登場した伝説の95年グラストンベリー、
これが本当に素晴らしい。
このステージに立つまで15年かかったので、
あなたたちも希望を捨てずに頑張りなさいというMC!)
あの詞の内容は、
英国人であるならば永遠に避けられない「階級」について、
おかしく、皮肉っぽく、そして精巧に描写したところが(実話だし)
ものすごく賞賛された。アルバムも「Different Class」だしねぇ。
私もイギリスに住んで、やはり階級の違いを目の当たりにして
(愛読している新聞から、愛用しているスーパーまで細かかったな)
おぉおぉ、これがPULPのアレか!なんて、のほほんとしてましたし。
一躍、普通の小市民的な生活送ってる
32歳の遅咲きロックスターということで
祭り上げられた当のジャーヴィス自身は、
言わずもがな成功からくるプレッシャーに押しつぶされる。
ヤク中になり、そこから
「This is Hardcore」が産まれるわけだが、
その顛末は10年前に制作されたBritpop回顧映画
「Live Forever」でも語っていましたな。
私自身、ジャーヴィスはモリッシー、イアン・カーティスと並んで
偉大な英国詩人だと思っているんだけど
(トップ3!)
実は一番売れた「共闘もの」は個人的に苦手。
(「Common People」「Mis-Shapes」とか)
男性が感じる恋愛の情けなさや切なさ、女々しさを
ウィットで包んでいる詞がとにかく好きで好きで・・・。
セックスのことと絡めてある詞は本当にリアルというか、
やっぱりOasisの「wonderwall」の詞とか
絵空事で嘘っぽいなぁとか思ってたからw
「初めてヤッたときのことを覚えてる?
最悪で思い出すことができないな
でもあの時より変わって、僕たちは成長しただろう?
君が今何しようと気にしないし、まして他の男とヤッててもね
でもあの時のこと 僕に欠片でもいいから残しておいてほしいんだ」
心が射抜かれて今も胸の風穴が塞がらない
「Do you remember the first time?」
(このPVにMenswearのジョニーとクリスが出てるんだよね!
screw(ヤル)という単語が強いので knewに変更されています)
最近、猫目女子のソフィー・エリス・ベクスターが
カバーしてるのを聞いたんだけど、女性の立場からこの歌うと
また違う印象があるなぁ。新発見。せつなさ倍増。
君の家はすごい小さくて 壁はウッドチップ
僕が君の家の周りをうろついても 全然君は気づかない
あぁ小さなことまで覚えているよ デボラ また電話してよ
じゃあ2000年になったら また再会しようよ
そんなに僕たち変わってないと思うし
2時に街にある、あの噴水のところで会おうよ
君が結婚していたなんて知らなかった!
僕は一人で孤独で湿っぽく暮らしてるよ
そうそう日曜日は何してるの?君の赤ちゃんを連れておいでよ」
という女々しさ爆発、あわよくば虎視眈々
しかし一歩間違えれば、ストーカーぽい
「Disco2000」
St Martin Collegeの映像科に通っていたジャーヴィスだけあって
絵コンテが浮かぶような歌詞の世界も大好きだった。
クローゼットに隠れる描写がある「Babies」は
どうしてもデヴィッド・リンチの
「ブルー・ヴェルヴェット」を思い出させるし
定点カメラを置いて、インモラルな行為を覗き見しているような
「Sheffield: Sex City」は(ジャーヴィスの吐息が色っぽいんだけど、
この曲、空耳で採用されたんだよなぁw)
ゴダールの「彼女について私が知っている二、三の事柄」っぽい。
その詞の世界観を、
故郷シェフィールドの映像と共に収めてあるのがとても良い。
ジャーヴィスの妹や母親も登場していたり、
その昔に雑誌で読んだっきり忘れていた情報・・・
「ジャーヴィスが魚市場で働いていた」ことも語られていたり。
(どうしても魚の匂いが指から取れなくて、
10分間も両手を消毒液につけていた等)
タイヤ交換している普通のジャーヴィスが、ものすごく愛おしいぞ!
ちなみに着ている服は、全部APC!
(しかもジャーヴィスのためだけに作ったやつ!)
勿論、バンドの裏話など
(ヴァイオリンのラッセルが参加してないのが残念)
非常に懐かしい思いが胸に去来して、じーんと来ましたわ。
字幕がないので、一生懸命何回もセリフを聞いて
メモ書きしたのも、また学生時代のこと、思い出したよ。
そうやって、一筋縄ではいかず、
紆余曲折、山越え、谷越え、海越え、国境越えして
初めて会得できる、理解できるPULP。
世の中のことが簡単にわかってしまうのはつまらない、と
常々思っている天邪鬼な自分には、
これぞドSのハードコアなDVDという感じで
(This is Hardcoreね)今年一番の素晴らしい映画であった。
鑑賞後、ふと胸に浮かんだ言葉は
「心にいつもジャーヴィスを!」これに尽きる。
そんな映画です。(どんなだ?)
天邪鬼だから、教えませんw