2012-01-31

Perriand/Goya/Blake

仕事の関係で美術館やギャラリーの招待券を貰うことが多い。
この点に関しては、本当に有り難いのだけど
なかなか消化できないのが現実。
でも額面みると、途端に興味が湧いてきて
行ってみようかっていう気になるのも事実。
そんな気分で昨年末、鎌倉にプチトリップした目的は
「シャルロット・ペリアン展」を見に行くことだった。
女性デザイナーの先駆者である彼女の回顧展。
全く建築に疎いのだが、そんな知識がなくても素晴らしい展覧会だったなぁ。
自分の左胸にふつふつと湧きあがる予期せぬ感情に当惑させられてしまったほど。

ル・コルビュジエのお弟子さんであり、板倉準三や柳宗理と交流を深め
戦前から来日していたという、なんともドラマチックな生涯。
作品も無印の家具の源流のような、ミニマル感溢れるものばかり。
下の椅子は1941年作!
図書館にあった自伝を読破したけど、
同じ女性としてなんだか勇気が湧く良本だったわ。
手元におきたい本だけど、5000円するんだよなー。古本屋めぐるか。
初めて行った神奈川県近代美術館・鎌倉館は
そんなシャルロットの友人である板倉準三の建築。
中庭から見える池は映画「ノルウェイの森」にも出てくるんだとか。
「レンコンカフェ」の内装が素敵だったー。人がいないのもよかったなぁ。
オレンジと白の組み合わせってどうしても「トレスポ」思い出しちゃうw

そういうわけで今年初めのアート鑑賞は西洋美術館での「ゴヤ展」

目玉は「着衣のマハ」裸じゃないヴァージョンね。
裸のマハ、といえばペネロペ・クルスの映画であったなぁ。
その名も「裸のマハ」そのままじゃん!


マハっていうのは名前じゃなくて
スペイン語で「小粋な女(小粋なマドリード娘)」という意味。
まぁつまり現在の言葉で言うところの「キャバ嬢」みたいなもんか?
そうなると原田マハさんという方は・・・
わざと知ってて狙ってつけているのかしら?
(この方原田宗典の妹なんだね。この辺りの文筆家はどうも嫌い。
中谷彰宏とかさ、どうも胡散臭いし軽い)

そういえばゴヤもの映画と言えば、もうひとつあったな。
「官邸画家ゴヤは見た」未見ですが・・・。
 
監督はほぼ伝記映画ばっかり作っているミロス・フォアマン。
「カッコーの巣の上で」「アマデウス」
「ラリー・フリント」「マン・オン・ザ・ムーン」・・・名作揃いだなぁ。
それにしてもジム・キャリーの最近の暴走ぶりがちょっと心配。
これでオスカー獲ってたら今どうなってたんだろう?
REMもまさか解散するとはなぁ。

フォアマン作常連俳優のヴィンセント・スキャヴェリが亡くなったときは
ちょっとショックだったなぁ。↑この人絶対見たことある俳優さんだよね。

とまぁゴヤの話、全然書いていないのですが
当初官邸画家ですから、ゴヤって由緒正しき雰囲気、
もしくは右思想でノホホンと生きていたのかなぁ
なんて思ってたんだけど、意外や意外。

ものすごく社会派だったのです。
愚鈍な人物をロバに例えて描いたり、戦争の悲惨さ、
闘牛は悪だとか、そういったものを真っ直ぐに見つめて
ドロドロとした負のパワーから描き続けていた・・・。

数々の絵と対峙して、その意外さに驚愕。
お正月からちょっと陰鬱な感じになってしまったけれど、
知的好奇心を揺さぶられるいい展示でした。

で、西洋美術館と言えば
前述の話を引き合いにするべく
設計はル・コルビュジェ。

西洋って世界遺産の登録を何度も申請しているけれど、
個人的にはうーんと首を傾げちゃう。まぁ不思議な空間ではあるけれど。
案の定、登録何回も落ちてるわけで・・・。

でも行くと結構写真撮っちゃうんだよなぁ。
そうそう、第2展示室で知らなかったのだけど
偶然ウィリアム・ブレイクの版画展がやっていた!ラッキー!

宗教画ってどうも好きではないんだけど、
ブレイクは英国人ですからね、やっぱり基本だろうとw

よく見るとヘタウマっぽいんだけど、
緻密に書き込まれた線という線を追っていくと
見れば見るほど魅了される不思議な絵である。

ダンテの神曲の挿絵もよかったけれど、
ヨブ記に心を奪われたわー。
 サタンの堕落。

繁栄を回復したヨブとその家族(めでたしめでたし)

ふちのヒツジや牛、フォントが「かわいい」なんていうと
けしからんか?


ウィリアム・ブレイクの詩に曲をつけた「エルサレム」は英国第3の国歌。
(第2の国歌は威風堂々←上下に踊るのがいいんだよなー)
BBCPromsで毎度おなじみの曲だけど、
こうみんなで歌われると、本当に圧巻!
これ見るとあーイギリス行きたいって思っちゃうんだよなぁ。
 
 
And did those feet in ancient time,
Walk upon Englands mountains green:
And was the holy Lamb of God,
On Englands pleasant pastures seen!
古代 あの足が
イングランドの山の草地を歩いたというのか
神の聖なる子羊が
イングランドの心地よい牧草地にいたなどと
And did the Countenance Divine,
Shine forth upon our clouded hills?
And was Jerusalem builded here,
Among these dark Satanic Mills?
神々しい顔が
雲に覆われた丘の上で輝き
ここに エルサレムが 建っていたというのか
こんな闇のサタンの工場のあいだに
Bring me my Bow of burning gold:
Bring me my Arrows of desire:
Bring me my Spear: O clouds unfold!
Bring me my Chariot of fire!
ぼくの燃える黄金の弓を
希望の矢を
槍を ぼくに ああ 立ちこめる雲よ 消えろ
炎の戦車を ぼくに与えてくれ
I will not cease from Mental Fight,
Nor shall my Sword sleep in my hand,
精神の闘いから ぼくは一歩も引く気はない
この剣をぼくの手のなかで眠らせてもおかない
Till we have built Jerusalem,
In Englands green and pleasant Land.
ぼくらがエルサレムを打ち建てるまで
イングランドの心地よいみどりの大地に
 
2012年もいろいろな物を吸収して日々更新したいものです。

2012-01-22

Restless

2012年初めの映画鑑賞は
ガス・ヴァン・サントの「永遠の僕たち」(Restless)
はい、加瀬亮目当て!かせーーーーー!好きだーーーー!
だもんで、トレイラー出てからずっと楽しみにしていたのです。
この邦題なんとかしてほしいなぁとかブツクサ言いながら
レディースデイに鑑賞。16:30に脱社して16:55の回に間に合ったー。
加瀬たん、軍服着てるってことは
硫黄島で一番悲惨な死に方した清水のオマージュなの?って
思っちゃったわ。
神風特攻隊のゴーストという突拍子な、でも映画の鍵を握る役どころ。
英語ペラペラ、上手だなぁ。アメリカンイングリッシュだけど。

まぁ加瀬亮って世間的にはい・か・に・も!な草食系で
「めがね」「プール」「マザーウォーター」「東京オアシス」の
いわゆる「ほっこり系」の一連のプロジェクトに出ずっぱりだけどさぁ
もうあれはいい加減辞めた方がいいと思うんだよなぁ。
ハナシツマンナインダヨ・・・。

半径50メートルで完結する映画が私はどうも好きじゃないのもあるんだけど、
さっさと瑛太の弟にその地位を渡した方がよい。
つか、加瀬たん童顔でうっかり大学生役もできるかもしれない雰囲気だけどさぁ。
ハチミツとクローバーの時なんて31!)

なのでもう40歳近い彼がアウトレイジで新天地を切り開いたのは
非常に喜ばしいことだ。
あの冷静にキレてる加瀬たんになら嬲られてもいいよなぁと
倒錯させられてしまったわ。腕折ってくれw
この編集作った人、最高だよコノヤロー!

まぁ加瀬亮の話で終わってしまうのもなんなので映画の話。

告別式傍聴を趣味としているイーノックは、ある日会場でアナベルに出会う。
イーノックは学校も行かず友達もいない。唯一の友達は「ヒロシ」。
でも彼は神風特攻隊のゴースト。
イーノックとアナベルは恋人同士になるが、アナベルの余命は3か月だった・・・。

というまぁ非常にシンプルな話なんだけど、
とにかくアナベル役のミア・ワシコウスカがかわいいなぁ。
グウィネスにも似てるけれど、ベリーショート姿がよく似合ってる。
そして、出てくるファッションがどれも素敵。
ダルメシアン柄のコートとか、キルトのブランケット、
はたまた病院の検査服とか、グッと惹かれるものが多かったわ。

片やイーノック役のヘンリー・ホッパー。
デニス・ホッパーの生き写しか?というくらい本当にそっくり。
ちょっとイーサン・ホークぽい雰囲気もあって、美少年。

加瀬が演じるヒロシは、飄々として掴みどころのない、
それでいて玉砕した黄泉からのメッセンジャー、
神出鬼没・年齢不詳。(なんたってゴーストすから)
難役だけど、違和感なかったなぁ。

あと、ちょっと嬉しかったのが、
スカイラー・フィスクとジェーン・アダムスが出てたこと。

「オレンジカウンティ」は大好きな映画!
サントラもあの頃の音楽満載でよかったなぁ。
憧れの大学教授に会うところは、もらい泣きしちゃうくらいだ。
スカイラーは、シシー・スペイセクの実娘なんだけど
お母さんに比べると色素は薄くないねw

余命いくばくもない時に出会うのって、
刹那というか逝く方にとっても送る方にとってもものすごく辛いね。
自分も身内を送ったときの、
なんというのか、あの臨終のときのピーっていうパルス音が
未だに耳に残っている。
もう8年も前のことだけれど、乗り越えるまで時間がかかったなぁ。

ただ立川談志が言うように
「余命宣告されるのは、突然亡くなられるよりもまし」というのは
自分も同感。

誰しも喪失感は味わいたくないけれど、
少なくとも自分はいくつもそれに曝されて、(残されたり去られたりで)
なんだか人にやさしくできたのかなぁと思う。
最後のイーノックの爽やかな表情に、
そんな自分を重ねてみたりしたわ。

小品な映画で湿っぽいけれど、良作。
じゃあ次は50/50見に行くかね。

2012-01-06

THE TRIP

あけましておめでとうございます。
いつも読んでくださっている方、
通りすがりの方もありがとうございます。
感謝感謝。
今年もつらつらと書き綴っていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

ところで。
最近、急激な円高で
経済不況、赤字国債の発行における財政難、
年金・保険改革および復興税の導入・・・
とまぁ先行き見えず、嗚呼憂国と嘆くのも
まぁ正月からどうなの?なんで
そんな状況下での嬉しいことと言えば

円高なので、アマゾンUKがありえんくらい安い!

これです、これ。
もうアホみたいにDVDだの書籍だのを購入し
一人悦に入って、自分の部屋も
「ときめくもの」でいっぱいな今日この頃。

その中でも
最高だったひとつが
マイケル・ウィンターボトム監督の「The Trip」
これは、東京国際映画祭で
監督が来日した際の顛末に詳しいのだけど、(→ここ参照
あぁあのとき私がティーチインで手を挙げて
質問したからこそ、この作品を知り、買って、見て・・・

そしてこの映画に恋をした。そう、これが私の見たかった映画だった!
ウインターボトム、Trishnaは散々だったからこそ
どうしてこれを東京国際映画祭に持ってこなかったのかなぁ?
まぁキュレーターは本当にどうかしてるわな。

出演は、
Steve CooganとRob Brydon。
UK好きならお馴染みのコメディアン。

イングランドのマンチェスター近郊に住んでいた時、
当時の恋人の影響により
延々とテレビを見ていたのだが、
これで「UKとは何たる国か」を学んだ気がする。
スノッブで下品でそして何よりもBrutal・・・残虐さ、
それがUKなんだと肌で感じた。
それが顕著に表れているのは、コメディだった。
20代の多感なときだったからこそ、
カルチャーショックを受け、そして今の自分の礎・財産となった。

日本人にとってUK好きは多いけれど、
あんまりコメディのことを話せる人が少ないんだよねぇ。
未だにモンティパイソンとかMrビーン止まりなのが
もったいないなぁというか・・・。うーん。

住んでいたのは2003年~2005年あたりまでだったのだが、
彼らとRickey Gervais
The Officeは国宝級 これ本当にイギリスで大ニュースになった)
Peter Kay(長年ジョンスミスのCMやってるけど全ておかしい)
Harry Hill、(モリッシーの真似が激似
League of Gentlemen(次世代のモンティパイソン
Chris Morris(ジャーヴィスの真似鉄板。彼は後に過激すぎて干される)
Leigh Francis(Bo selecta!のマイケルジャクソンネタが鉄板
Jimmy Carr、Graham Norton、Bill Bailey、Matt Lucas&David・・・
それからSacha Baron Cohen!

砂漠が水を欲しがるが如く
彼らの番組を延々見続けていたものだった。
今でもyoutubeでたまに見ては大笑いしている。いやぁいい時代!

で、今回のこの「The Trip」だけど
二人はもともと仲が良く、ウィンターボトムの
「24HPP」「A Cock and Bull Story(トリストラム・シャンディの生涯と意見)」
で共演しているので、タッグを組むのは3度目。

内容はいわゆるモキュメンタリー。
クーガンはオブザーバー紙の取材のために
湖水地方にある6つのフレンチレストランを周る。
恋人と楽しく、と考えていたが、最近仲はギクシャク。
結局距離ができてしまう。
代替えに、と選んだのが、ロブ。
かくてランジ・ローバーの旅が始まる・・・。

お互いの演技を戦わせたり、罵倒したり、
北イングランド出身VSウェールズ出身の不毛な議論、
はたまた孤独なシングルVS良き家庭人の対比など
本当に私が好きな内容が詰まっていました。
大笑いしたのが「マイケル・ケインの物真似対決」
She was only 16 years old! いやぁ本当に似てるね。

でも一番すごいのが、ホーキング博士。
こういうのが普通にまかり通るのがUKのいいところだ。

そしてやはり白眉ですなぁクーガン。
若い時よりかっこいいなぁ。私生活乱れまくりだけど、
この人ってセクシーなんだよなぁ。大好きだ。
UKでは超ビッグなコメディアン、だけどアメリカではイマイチ・・・。
中途半端で虚勢張ってるクーガンの時折見せるペーソスがねぇ、
たまらんのですわ!
マイケル・シーンよりも俺の方が素晴らしいだろ!
というエゴイスティック丸出しの演技がリアルすぎる!

そしていわゆる「何の意味もないチャット」
この映画の最大の見せ場はここだと思う。
ムーアを走りながらどちらからともなく「古今東西でお題はムーア」
そしてふと口づさんだ歌・・・。あぁ完璧なライン!
ずーっとウィンターボトムの映画を見続けてきた私は
こういう小ネタが来ると、思わずニンマリしてしまう。

彼の映画の法則ともいうべき鉄板ネタって
マンチェスターネタ(Joy Division)とマイケル・ナイマンなんだけど・・・
(つまり「24HPP」と「ひかりのまち」からの引用。
これって監督自身大好きなんだろうねぇ。)

この「The Trip」はそんなのも当然の如く出てきます。
この曲こそこの風景のサウンドトラック、としてかかるのが・・・
やっぱりこれかい!
ちなみに24HPPのときに出てきた
マンチェスターは鉄道、コンピュータ、跳ねる爆弾を発明した
というセリフと全く同じラインが出てきますw

そしてエンディングに流れるのは
マイケル・ナイマンのIF
とまぁウィンターボトムの趣味が炸裂した素晴らしい内容!
★★★★★文句なし!

限りなく日本公開はない、のは寂しいところだけど
これ意外と今年の「したまちコメディ映画祭」に出したら
大爆笑すると思うんだけどなぁ。
やっぱり日本じゃ難しいのかなぁ?

美しい湖水地方の風景やホテル、
独創的なお料理みるだけでも価値あるんだけど!
http://www.bbc.co.uk/programmes/b00vsvv5