明日はパリを発って
いよいよマンチェスターに向かう。
朝10時20分の便だ。
早起きして、自分で空港へ行って搭乗手続きして・・・
あぁその前に、パリのマツキヨで買った
大量のコスメ、およびパッキングをやらなくていけない。
パッキングは本当に苦手だ。
いつもスマートに旅をしたいと思うけれど
何年経っても上達しない。
少しパッキングをしていたら
出かけなければいけない時間になった。
パリの最後の夜は・・・パリ管弦楽団を見る!
海外で名門オケを見るのは、ちょっと勇気がいったのだが
もしかしたら二度とないチャンスかもしれない。
実を言うと、私がパリに滞在したのは
11月4日からの3泊4日なのだが、
11月1日から3日間、Pitchforkのフェスが開催されていた。
なかなか魅力的なラインナップだったので、食指が動いたのだが、
パリ来たのに、これで3日間潰れるのもなぁという思いもあった。
Animal Collectiveがトリの2日目だけ、いう考えもあったが
他のラインナップが、どうもイマイチで
(Jessie Wareとあと好きな誰かがもう一人同じ日だったら
行っていたのだが!)
だったらAnCoの単独ライブへ行けばいいじゃないか、と思った。
そのときに、何となくパリのライブ情報などを調べたところ
(かなり調べるのが難しいのだが・・・)
パリ管の演奏がある、しかも演目が「春の祭典」というので
気が変わらないうちに、日本からチケットを購入してしまった!
席を事前に選べるので、うんうん考えた結果
コンマス前のS席確保。€60!
日本の海外オケは値段が法外すぎる。
ひとえに楽器の輸送費代というのもあるが、
パリ管の昨年のサントリーホールはS席¥26000!
行くでしょ、そんなんだったら!
チケットはネットで決済してからエアメールで10日ほどで届いた。
いやぁ本当に便利だなぁ。
ちょっと上品なドレスを着て、いざ会場のサル・プレイエルへ。
サガンの「ブラームスはお好き?」の待ち合わせ場所だね!
夜の20時からの演奏会ということで、
ちょっとメトロに乗るのも躊躇ったが、難なくクリア。
おぉ、ここがパリ管の本拠地のサル・プレイエルか!
当日券を求める人が本当に多かったなぁ。しかも老若男女。
クロークにコートを預けて、開場を待つ。
今夜のプログラムは
・クープランの墓(ラヴェル)
・ヴァイオリン協奏曲3番 (モーツァルト)
・ヴァイオリンと管弦楽のための夜想曲「同じ和音の上で」
(アンリ・デュティユー)
・春の祭典(ストラヴィンスキー)
ヴァイオリンはドイツのヴァイオリニストの
クリスティアン・テツラフが演奏。
指揮は言うまでもなくパーヴォ・ヤルヴィ。
だいたい「ハルサイ」だけで行く!と決めた自分だったが、
1曲目のラヴェルの「クープランの墓」も好きな曲。
ラヴェルは好きな作曲家で、
(ベタですが、ボレロとか大好きなんだよねぇ)
フランスを代表するオケで
しかもパリで演奏が聞けるなんて・・・!!!
クラシック音楽は、まぁ年代だとか作曲家、楽団で
人それぞれの好みがあるかと思うが、
自分は(まだまだ聞きこなしてはいないレベルであるが)
近現代ものばっかり。ロマン派でもチャイコ以外は、うーんという感じ。
圧倒的にロシアとフランスものばかりだ。
だから、いわゆる古典と言われる
バッハ、モーツァルト、べートーベンは、
本当に苦手というか退屈で退屈でしょうがない。
素直すぎて面白みがないというか・・・。
グレン・グールドのゴルトベルクも自分には何も響かない。
そういえば、私は10年近くピアノ教室に通っていたが、
先生の意向で、ショパンばかり弾かされていた。
ショパン以外だと、ドビュッシーばっかりだったが。
(リストまで辿り着けなかったw)
もしかしたら幼少の頃のそういう刷り込みって大きいかも。
子供ながらにポリリズムや全音音階だとか
黒鍵の多い曲が好きだったなぁ・・・。
きっと知らず知らずのうちに訓練されていたのかもしれない。
自分の好きなものを一周回って再確認したという感じだ。
サル・プレイエルは写真撮影禁止だったので
拝借した画像だとこんな感じ。
自分の席は、印をつけたところ。
前が通路になっているところをわざと選んだ。
しかし、ちょっと前過ぎたわ、正直言って。
左隣はちょっとほろ酔いの太ったおじさん、
右隣は80代近くの老夫婦。
おばあちゃんは、懐中電灯を持って熱心にプログラムを読んでいた。
こんな濃いフランス人の間に挟まれる私・・・。
演奏が始まるよーというチャイムが館内に響いた。
そのチャイムというのが、
目覚まし時計のあの「ジリリリリリ」という音でかなりビックリ!
でも、変なメロディよりも潔いかも。
こんな些細なことですら気になってしまう。
楽団が入場して、そのあとコンマスが登場、
Aの音を奏でて、あの独特の音が小波の様にホールに拡がっていく。
ちょっと間を置いて、やるびー・ぱぼぱぼ、じゃなかった
パーヴォ・ヤルヴィ登場。拍手半端ない!
にしても、本当に目の前にマエストロいるので、びびったわ、正直。
そして「クープランの墓」の第一楽章Préludeが始まった。
(追記:なんと下の映像は、この日私がパリで見た演奏会!!!)
ラヴェル本人が管弦楽版に楽章を削り、編曲を加えたもの。
この編曲が、本当にプロ中のプロという言い方もなんだが、
音の響き方、楽器の選択から、パーフェクトすぎる。
ものすごい数式を積み重ねて編曲したのでは?なんて勝手に思っているが
ドミノが美しく倒れてアッと驚くような仕掛けが浮かび上がるような感じ。
だいたいこの第一楽章Préludeのオーボエの音から、
夢の世界へ誘うようで心を鷲掴みにされる。
そして何といってもこのリズム感、12/16拍子!
半音階のジャズっぽいベースの動き、
木管楽器が緩急をつけながら、まるで弧を描くように
ふわふわと浮遊していると、ハープが風のようにさらっていく。
ものすごく集中して聞いたので、正直何にも覚えていないのだが
会場全体を包み込む楽器の共鳴具合が、
本当に心地よくて、第1楽章終わったら、はぁと溜息ついてしまった。
もうすごいアルファ波出ていたと思う。
そんなこんなで気づけば第4楽章のRigaudon(リゴドン)
いつも演奏会で感じるのは、曲が終わりの方にくると、
とてつもなく寂しい気持ちになるってことだ。
あぁもう少しで終わってしまう・・・。ずっと聞いていたいのに。
リゴドンは快活な4分の2拍子で、しかも最後はビシッと終わる。
曲が終わった瞬間から、ブラボーの嵐。
ヤルヴィは豪快な指揮というよりも、
パズルを組み立てるような緻密で繊細な感じだった。
この曲自身が戦死した複数の友人に捧げるために作ったという
ややもすれば内省的なレクイエムでもあるのだが、
そういう心の機微をすくい上げる「暖かさ」を
音に変換して放っているように思えた。
この夜のことは一生忘れないだろう。
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